6年越しの気づき
一人暮らし6年目。
やっと気づいたことがある。
先月のブラックフライデーに乗じて冷蔵庫を買い替えた。
150L強の少し大きめのやつだ。
それまで使ってたやつは100Lに満たない何とも頼りないやつだった。
調味料だけでいっぱいになるし、買い物のたびにテトリスをやる羽目になる。
でも天板の高さが腰ぐらいだから、上に電子レンジを置いてさらにその上にトースターを置けるところは気に入っていた。
ブレーメンの音楽隊よろしく、ちょっとずつ小さくなっていく白物家電たち。
東京では建物が縦に伸びていくのも頷けるなと思いながら5年が経った。
ところでこの冷蔵庫、電子レンジを上に載せてもまだ少しだけスペースが余る。
だからレンチンしたものをそこで取り扱うのにちょうどよかった。
自炊で初めて覚えるのは白ご飯をラップにくるんで冷凍することだろう。
こんなお手軽便利な非常食製造方法があるのに、サトウのごはんは誰が買うんだろう?
そんなことはさておき僕は、白ご飯を冷凍するときは必ず、油性ペンでラップに重さを記録しておく。
そうしたら胃袋の空き具合とのミスマッチを防げるからだ。
ラップに書かれた数字とその時の胃袋の様子をすり合わせてレンジであつあつにする。
そのあつあつご飯が触れる温度になるまで冷蔵庫の天板の上で少しだけ休ませる。
そののち開封して茶碗にイン。
これが一連のお作法である。
さて、ここで僕はある問題に悩まされていた。
あつあつになると油性ペンのインクが冷蔵庫に写ってしまうのだ。
一人暮らし1~2年目のときこそ、インクが写る時間を与えないように火傷を覚悟してスピーディーに開封作業をしていたが、次第にインクの汚れが目立つようになってどうでもよくなってしまった。
機能に変わりはあるまいと高を括って5年間過ごしてきたが、ここにきての買い替えである。
できるだけ純白を保ってあげたいのが人情だ。
と言いつつもやはり火傷は嫌なので、あきらめようとしていたところでひらめいた。
「パッケージの裏側に書いたらいいじゃん」
と。
開封するときに接地しない側の、ラップが折り重なるほうに書けば解決する。
なんでこんな簡単なことに5年も気づかなかったのか。
摩訶不思議だと頭をひねっていたら、あることに気が付いた。
ご飯をくるんだラップに文字を書く時、ペン先から伝わってくるラップのつるつる感と米粒のでこぼこ感が合わさった感触に心地よさを感じている。
無意識ながらその快感のとりこになっていたのだ。
つくづく習慣というものは恐ろしい。
こんな話、わざわざ人に言うほどのことではない。
だけどここ最近で一番大きい気づきだ。
だから電子の海に漂ってもらうことにした。
当たり前だけど作家さんのエッセイのようにはうまく書けない。
でもうまく書けないってことが分かったから、書いた価値があると思っている。
いつかあんな風に読みやすい文章が書けたらいいなあなんて思いながら、飽きるまでは続けたい。